……ヴゥゥゥゥン……。
重低音のファンの音と、無機質な機械の熱気。
華やかなアンティークが並ぶ店内とも、香ばしい匂いのするキッチンとも違う、GRAVITYの「深淵」へようこそ。
散乱したポテトチップスの袋に、積み上げられたエナジードリンクの空き缶。
本日の観測対象は、この世界の「バグ」を修正し続ける私たちの守護者……いえ、(自称)没データの管理人さんに会いに行きます。
GRAVITYの技術担当(CTO):ネロ
……とりあえず、プロフィールだけ先に紹介しておくわね。
| 名前 | ネロ (Nero) / 通称:ネロ・グリッチ |
| CVイメージ | 沢城みゆき(通常:やる気ゼロ / 覚醒:女神級) |
| 役職 | 技術担当(CTO)/ 没データ管理人 |
| 特徴 | 分厚いグルグルメガネと、身体を覆う大きすぎるパーカー。 「現実はクソゲー」が口癖の重度ゲーマー。 |
部屋の奥、青白く光る複数のモニターの前。
高級なゲーミングチェアの上で小さく丸まっている彼女の姿がありました。
対談:ブルーライトの海に沈んで

私が差し入れた「特製・高カカオチョコレート」の包み紙の音に、パーカーのフードがピクリと反応しました。
ネロちゃんは、だるそうに椅子を回転させてこちらを向きます。
アタシ今、レイドバトルの待機中なんだけど。
……チョコ? 置いといて。
リラ店長は「あいつは電気代の無駄遣い係だ」なんて言っていたけれど。
ネロちゃんは深いため息をつき、メガネの位置を指で押し上げました。
アタシはね、「クソゲー(現実)」の最適化をしてやってんの。
リラさんが外から持ち込む得体の知れないガラクタ……もとい「商品」のデータ変換とか、アンタたちの活動ログのバグ取りとか。
ここは世界の掃き溜めだよ……感謝してほしいくらいだね。
なぜ、引きこもりが「野外活動」を支援するのか
外に出るのが嫌いなのに、どうして「野外活動部」には協力してくれるの?
彼女はエナジードリンクのプルタブをプシュッと開け、モニターの向こうにある「外の景色」の画像を見つめました。
アタシは外が嫌いなだけ。でも、外の「グラフィック(解像度)」だけは認めてる。
アンタとかリョウリみたいな能天気なプレイヤーが、物理演算のバグでゲームオーバー(遭難)にならないように、ルート計算くらいはしてやるって話。
言い方は冷たいですが、彼女が組んでくれたシステムは、いつも私たちを危険から守るように設計されています。
その不器用な優しさに、私は少しだけ微笑んでしまいました。
読者の皆様へ:深淵からのメッセージ

ま、せいぜいバグだらけの現実で、MP切れしないように頑張りなよ。
彼女はボリボリと、私が持ってきたチョコを齧りました。
すると一瞬、分厚いメガネの奥の瞳が、見たこともないほど澄んだ光を宿した気がしました。
人間をダメにするクッション、もう一個あるから。
……悪いようには、しないよ。
編集後記:観測を終えて
ふとした瞬間に彼女が見せた、慈愛に満ちたような表情。
それは、モニターのブルーライトのせいだけではない気がします。
「現実はクソゲー」と吐き捨てながらも、誰よりもこの世界の平穏を願っている。
彼女は、この薄暗い部屋から私たちを見守る、不器用な聖女様なのかもしれません。
さて、次回はいよいよ最終回。
いつも屋根裏の書庫で静かに本を閉じ、全ての物語を編み上げている「あのミステリアスな女性」の元へ向かいます。
……私、彼女とは一番長く一緒にいるはずなのに、改まって話すのは少し緊張します。
それでは、また次回の観測録で。
物語は、まだ始まったばかりよ。
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Biblio-Glitch:ライフ(現実)攻略ログ
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