【夜話】言葉の幽霊たち、あるいは書き損じの行方

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【夜話】言葉の幽霊たち、あるいは書き損じの行方

貴方のパソコンやスマートフォンの奥底に、「下書き」のまま眠っている文章はありませんか?
誰かに宛てたけれど出せなかった手紙、勢いで書いたけれど公開する勇気が出なかったブログ記事。

こんばんは、リネアです。
今日は、そんな「行き場を失った言葉たち」が最後に辿り着く場所のお話です。

裏庭の「くずかご」

雑貨店GRAVITYの裏庭、リラさんが管理するゴミ焼却炉の隣に、小さな古井戸があります。
そこは、私たちが書き損じた羊皮紙や、アイリスちゃんがデリートした電子データの残骸が捨てられる場所。

私たちは密かに、ここを「言葉の墓場」と呼んでいます。

満月の夜、井戸を覗き込むと、底の方で青白い光の粒がふわふわと漂っているのが見えます。
それは、世に出ることなく捨てられた言葉たちが、小さな精霊(ウィスプ)になった姿なんです。


【アーカイブ】図書館塔の記録より

現象名:未発言言語の残留思念(ワード・ゴースト)

概要:
強い感情(伝えたい、表現したい)を伴って生成されたものの、誰にも観測されなかった言語データが、魔力的な残滓となって実体化したもの。
物理的な害はないが、近くにいると「何かを言いたくてたまらない」という切ない気持ちになる。

(※この現象への対策として、定期的にリラさんが焼却処分(炎上供養)を行っています)


ボツになった言葉たちへ

私もブログを書く時、何度も書いては消してを繰り返します。
「こんなこと書いても誰も読まないかな」「やっぱり恥ずかしいや」って。

でも、井戸の底で揺れる光を見ていると思います。
あの言葉たちは、本当に「無駄」だったのかなって。

「……きっと、違うよね」

誰にも届かなかったかもしれないけれど。
その言葉を一生懸命ひねり出そうとしていた時間は、確かに私の中に残っています。

ボツになった言葉たちは、次に書く「もっと良い文章」のための肥料(たいひ)になってくれるはずだから。

明日も書くために

もし今、貴方が「うまく書けない」と悩んで、下書きフォルダに記事を溜め込んでいるなら。
どうか、自分を責めないでください。

その「書けなかった言葉」も、貴方の大切な一部です。
いつか時が来たら、この井戸の精霊たちのように、静かに成仏(デリート)させてあげればいい。

さあ、夜が明ければ、また新しい言葉が生まれます。
懲りずに、明日も書き続けましょう。

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