キッチンから、何かが焦げる匂いと、勇ましい音が響いてくる。
それは料理というよりも、鍛冶屋が剣を打つ音に近いかもしれません。
GRAVITYの台所では今、リョウリさんが新しい「相棒」との契約の儀式……いえ、「シーズニング(油慣らし)」を行っている最中です。
「煙探知機が鳴るわよ、リョウリちゃん」
わたしが声をかけると、彼女は煤(すす)けた顔で、けれど太陽のように笑って振り返りました。
この子が立派な『ブラックポット』になるための、産声なんだねっ!!
手には、鈍く黒光りする重厚な鉄のフライパン、「スキレット」。
不便で、重くて、手がかかる。
けれど、だからこそ愛おしい。
今日はそんな「鉄を育てる」お話です。
錆びるからこそ、美しい。鉄のフライパンを選ぶ理由
テラ・ロジカ(現実世界)には、テフロン加工という魔法のように便利な技術があると聞きました。
焦げ付かず、汚れもすぐに落ちる。
それはとても合理的で、現代の賢い選択だと思います。
でも、わたしやリョウリさんが選ぶのは、この無骨な鉄の塊です。
でも、鉄は違うのよね。
鉄のフライパンは、買ったばかりの新品が一番使いにくいのです。
食材はくっつくし、すぐに錆びようとする。
まるで、まだ心を開いていない野生の獣のよう。
けれど、何度も油を塗り込み、火にかけ、料理を作ることで、油が層となって鉄を守り、黒く輝く「黒錆(ブラックポット)」へと進化していきます。
「傷も、焦げも、すべての歴史を吸収して強くなる」
それはまるで、旅人が経験を重ねて物語を紡ぐ姿と似ている気がするのです。
リョウリ流! 鉄鍋育成講座「シーズニングの儀式」
さて、ここからはキッチンの主、リョウリさんにバトンタッチしましょう。
新品のスキレットを迎え入れた時、最初に行う儀式。
それが「シーズニング」です。
鉄鍋ちゃんは、最初が肝心! 愛情をたっぷり注ぎ込んで、一生モノの相棒にするんだねっ!
1. 錆止めを焼き切る(火精霊の洗礼)
新品のスキレットには、錆びないように工業用の油やワックスが塗られています。
まずはこれを、洗剤でゴシゴシ洗い流し、その後にコンロの強火でガンガンに焼くのです。
煙がモクモクと上がりますが、怯んではいけません。
鉄が青白くなるまで焼き切ることで、不純物を取り除きます。
2. 油を馴染ませる(聖油の塗布)
ここが一番大切なポイント。
熱いうちに、オリーブオイル(または食用油)を薄く、全体に塗り込みます。
内側だけでなく、外側も、取っ手も、忘れずに。
3. クズ野菜を炒める(香りの定着)
最後に、野菜の切れ端(ネギやショウガなど)を炒めます。
これで鉄臭さを取り除き、油をさらに馴染ませるのです。
実食:熱々の誘惑「海老と茸のアヒージョ」
儀式を終えたばかりのスキレットは、黒く艶やかに光っています。
せっかくですから、その蓄熱性を活かした料理を作ってもらいましょう。

今日のメニューは「海老とマッシュルームのアヒージョ」。
| エテリア名(食材) | 現実名 |
|---|---|
| 海魔の腕 | むきエビ |
| 森の小人傘 | マッシュルーム |
| 火精霊の涙 | オリーブオイル |
| 魔除けの白鱗 | ニンニク |
たっぷりのオリーブオイルにニンニクの香りを移し、具材を投入。
「ジュワァァァァ!!」
鉄鍋全体が熱を帯び、食材を一気に加熱する音が、食欲を刺激します。
そのままテーブルに出せるのも、スキレットの魅力だねっ!
熱ッ! ……うまぁぁい!! エビがプリップリなんだよぉぉ!!
蓄熱性の高い鉄鍋は、火から下ろしてもずっと熱々。
オイルの中で踊る具材をハフハフと頬張る時間は、何にも代えがたい幸福です。
まとめ:手がかかる子ほど可愛い
使い終わったスキレットは、洗剤を使わずに(せっかく馴染んだ油が落ちてしまうから)、お湯とタワシで洗います。
そして火にかけて水分を飛ばし、最後に薄く油を塗ってあげる。
「面倒くさい」と感じるでしょうか?
でも、わたしはその手間が、道具への「おやすみなさい」の挨拶のようで、とても好きなのです。
育てた時間は、決して裏切らないわ。
……ふふ、次はどんな物語を、この黒い鏡に映そうかしら。
あなたも、一生付き合える「鉄の相棒」を育ててみませんか?
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LODGE(ロッジ) スキレット 6 1/2インチ
Check!
User: Nero > Status: Coughing
「煙感知。……ゴホッ。
リョウリ、排気ファン全開にしたから。あとそのアヒージョ、バゲット付きでこっち寄越しな。」